藤井八冠の強さを見た

3月10日のNHK杯準決勝、藤井八冠 VS 羽生九段 戦
藤井八冠の強さを改めて感じました。
特に藤井八冠の強さを感じた2つの局面を紹介します。

最初は、以下の局面。
後手の藤井八冠が4七歩なりと飛車取りをかけました。

ここでは、まあ飛車を逃げるのが普通で、それ以外だと
4三桂と攻め合う手を読むでしょう。
羽生九段も3六飛と逃げました。
解説の佐藤(天)九段も飛車をどこに
逃げるかというような解説でした。

ところがこの局面でAIは6三桂という手を示していました。
手裏剣のような手で、なかなか思いつかない手です。
羽生九段も佐藤九段もこの手は眼中にないようでした。

ところが局後の感想戦で明らかになったのですが、藤井八冠は
対局中にこの手を読んでいて、なおかつ対策までも考えていたのでした。
6三桂に対して同金、4三成桂、同金、3一飛成、
4一歩という順がいいのか、
5二玉、3二成桂、6三玉、3三飛成という順がいいのかと。

6三桂は羽生九段も佐藤九段もすぐには発見できないような
「妙手」です。
それを藤井八冠はいとも簡単に発見して、そこから読みを
深めています。
トッププロよりも頭ひとつ抜けているのか!
そのように思いました。

もうひとつは下の局面から後手の藤井八冠は5七歩成としました。

この5七歩成に藤井八冠は30秒+考慮時間1分の
1分30秒しか使いませんでした。
その後の進行からすると、おそらく藤井八冠はこの
時点で、先手玉は受けなしになること、そして
自玉は詰まないことを読み切ったものと思われます。
だから5七歩成と決断の手を指すことができたのでしょう。

部分的に先手玉が受けなしになるのは読めます。

しかし、その後の進行にあるように、自玉が詰まないか
どうかは非常に微妙です。

5七歩成、8六銀、5八と左、8一飛、6一金と進みました。
後手玉に何かありそうな非常に怖い形です。
また詰まなくても7六の桂を王手の連続で抜く筋もあるので
この変化も読まなければなりません。

プロでもすぐには読み切れない局面です。
それを藤井八冠は1分30秒で指しました。
考慮時間はもう1分あったのにそれを使いませんでした。

藤井八冠は1分30秒ですべてを読み切ったのです。
そして確信をもって5七歩成と指した。
もはや人間業とは思えません。

藤井八冠の強さを実感できた至福の一局となりました。

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